【スマート工場】どこまで進む?世界を動かす”工場自動化”の代表銘柄4選

2025年に生まれたトランプ二次政権において、更なるビッグテーマとなりそうなのが製造業の「リショアリング(国内回帰)」です。トランプ氏による大胆な関税策は世界中のマーケットに動揺をもたらしました。彼らの「狙い」は、大きく以下に集約されるようです。

第一に挙げられるのが、米国政府の財政改善です。関税自体によって短期的な歳入増を期待するのに加え、リショアリングによって貿易赤字を解消することが狙い。米国内に工場を作れば、もちろん雇用創出になります。中国依存を減らせれば、地政学的な優位性も高まります。

関税がもたらす景気への影響が懸念され、株式市場は混迷しています。しかし冷静に考えれば、上記を「好機」としうるカテゴリも存在します。そこで注目したいのが「工場自動化」を下支えする企業。実際にベッセント財務長官は、新たに米国で建設される工場が「スマート工場」で、AIや自動化が高度に活用されることを想定しているようです。

今回は、スマート工場の構築に関連する米国企業をいくつかピックアップして、そのビジネスモデルを紹介します。実際には色々なハードルがあり、トランプ政権の思惑通りに運ぶかは分かりません。それでも今後の時代を考える上で、非常に重要な企業ばかりだと思います。

日本が誇るアームロボットの象徴「ファナック」

ファナックは工作機械用数値制御装置(CNC)や産業用ロボットなどのFA(ファクトリーオートメーション)機器で世界トップクラスのシェアを持つ日本企業です。

自社工場にもロボットを導入した「無人工場」で知られ、工場の自動化・効率化技術でスマート工場の実現に貢献。製造現場の稼働データを活用するIoTプラットフォーム「FIELD system」を展開し、壊れない・壊れる前に知らせる・壊れてもすぐ直せるというコンセプトで設備の予防保全にも注力しています。

長年にわたり「技術のファナック」と称され、CNCとロボットの高度な制御技術を強みにしてきました。足元ではスマートファクトリー化に向けたOTとITの融合にも力を入れ、自社開発のFIELD systemを通じて工場内の様々な機械をネットワークで繋ぎデータ収集・分析を可能にしています。

グローバル展開として、北米市場でのプレゼンス強化のため米国ミシガン州に大規模拠点「ウエストキャンパス」を開設。約1.1億ドルを投資し、6,000台以上のロボット在庫を備えた物流センターや米国最大規模の自動化トレーニング施設を整備しており、2019年以降の累計投資額は2.5億ドルにのぼります。

生産面では本社工場に新棟を建設して産業用ロボットや射出成形機の生産能力増強を図るなど供給体制を強化中。技術面ではAIを活用したロボットの知能化や協働ロボット(人と一緒に作業できるロボット)の開発にも取り組み、より柔軟で使いやすい自動化ソリューションを目指しています。

>>もっと詳しく:スマート工場×米国回帰=? ”トランプ関税”に伴うリショアリングはファナックの追い風となるか?

FA技術の老舗「ロックウェル・オートメーション」

ロックウェル・オートメーションは米国に本拠を置く産業オートメーション大手で、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)などの制御装置をはじめ、産業用ソフトウェアやIoTプラットフォームを提供しています。

創業は1903年にさかのぼり、工場向け制御機器ブランド「アレン・ブラッドレー(Allen-Bradley)」で知られています。近年は「コネクテッド・エンタープライズ(Connected Enterprise)」戦略を掲げ、工場内のOT(制御・操作技術)と企業のIT(情報技術)を融合させるソリューションに注力。

事業セグメントはハードウェア製品のインテリジェントデバイス、制御システムや産業ソフトのソフトウェア&コントロール、エンジニアリングや保守サービスのライフサイクルサービスに分かれ、それぞれがスマート工場の構築を包括的に支援する体制です。製造業全般、特に自動車、食品飲料、ライフサイエンス分野など幅広い業界に顧客基盤を持っています。

ロックウェル・オートメーションは、長期的に見れば製造業のデジタル化需要を支え堅実な成長が見込まれます。短期的には依然として顧客の設備投資動向に左右されるリスクがあり、高金利や景気後退懸念が残る間は保守的な見通しが必要。

同社の強みであるソフトとハードの一体ソリューションは、一度導入した企業にとって運用効率や生産性向上の効果が大きく、顧客ロイヤリティは高いと言います。特に北米では自動車から食品まで幅広い産業で多数の導入実績を誇り、今後米国の製造業回帰やインフラ投資拡大の動きから恩恵を受ける可能性があります。

>>もっと詳しく:製造業の米国回帰における大本命?工場自動化の老舗「ロックウェル・オートメーション」

メカトロニクスを世界に提唱する「安川電機」

安川電機は日本を代表するメカトロニクスメーカーで、産業用ロボットやサーボモーター、インバータ(駆動装置)などを製造販売しています。

主力製品は、自社ブランド「MOTOMAN」の産業用ロボットと、FA機器の心臓部であるACサーボモータ/コントローラ。自動車から半導体、一般機械まで幅広い産業に顧客を抱え、世界の産業用ロボット市場ではファナックなどと並ぶ大手企業です。

安川電機はまた、「i³-Mechatronics(アイキューブ・メカトロニクス)」というコンセプトを提唱し、ハードとソフトを融合させたスマート工場ソリューションとして訴求。センサやAIを活用して工場内の設備稼働を見える化し、生産性向上に繋げる取り組みを顧客向けに提供しています。

スマート工場時代に向けて、安川電機はハード提供からソリューション提供への転換を掲げています。具体策の一つが「MOTOMAN NEXT」と呼ばれる次世代ロボットの開発・展開です。AI技術も取り入れ、従来は自動化が難しかった領域にも適用可能なロボットソリューションを目指す新シリーズで、2025年度から市場投入を本格化する計画です。

>>もっと詳しく:メカトロニクスで製造業を変える!安川電機の成長戦略とは?

スマート工場の眼「コグネックス」

コグネックス(Cognex)は米国マサチューセッツ州に本社を置くマシンビジョン(画像処理)システムの大手企業で、1981年の創業以来「機械の眼」となる製品を提供してきました。

製造ラインで製品の位置決めや検品を行う高性能カメラシステムや、バーコードリーダーなどの画像認識センサーを主力とし、工場の自動化に不可欠な視覚検査領域で世界的なポジションを確立。人間の目では追いつかない高速・高精度な検査や測定が可能で、自動車部品のキズ検出からスマートフォンの組立検査、物流倉庫での荷物仕分けまで幅広い用途で採用されています。

コグネックスは2023年10月に日本のマシンビジョン用光学部品メーカーのモリテックスを買収しており、レンズや照明といった要素技術まで取り込み製品ラインを強化しました。カメラから光学系、AIソフトまで一括提供できる体制を整え、より統合的なソリューションを提供する方針です。

新たな成長領域としてEVバッテリー製造ラインや物流分野に注力しているものの、景気敏感な電子業界に売上の過半を依存する構造上、短期的な需要変動の影響は避けられません。その中でも「製造業の高度化には視覚センサーが不可欠」という潮流は不変であり、専業メーカーとして培った技術力とサポート体制の両輪で優位性を保とうとしています。

>>もっと詳しく:「スマート工場の眼」Cognex──米製造業のリショアリングでトランプ関税の波に乗るか?